犬の白内障には種類別の症状と治療法がある

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いぬアイコンこの記事はわんちゃん用の記事です

白内障とは、眼の「水晶体が白く濁る病気」です。
水晶体は眼の表面にある角膜のすぐ内側にあり、ラグビーボールのような形をしています。
カメラに例えるとレンズの役割をしていて、その厚みを変えてピントを調節します。
眼の水晶体の図解
白内障はその水晶体の中にある水晶体液が白く濁る病気です。

犬の白内障は、老犬だけでなく若いワンちゃんでも発症率の高い病気です。
初期では目薬によって症状の進行を抑えますが、投薬のみによる完治は難しいので完治するためには手術が必要になります。

白内障の予防は難しく、早期発見、早期対処が大切です。
日常的に目薬を点すことも重要なので、日頃の健康チェックやワンちゃんとのふれあいが大切です。

犬の加齢性白内障と非加齢性白内障の原因

白内障の原因は老化によるもの(加齢性)と、そうでないもの(非加齢性)の2つに分類することが出来ます。
犬の白内障も人間と同様、老化によるものが殆どです。
しかし、若くても遺伝や他の要因で発症することがあるので「うちの犬はまだ若いから」と安心してはいけません。

加齢性白内障:40頭に1頭が発症!?

老化による白内障はワンちゃんでも多くみられます。
あるペット保険会社の調査では、9歳~12歳のワンちゃんの40頭に1頭が白内障を発症しているとの報告があります。

老齢犬の場合、ワンちゃんの体力が手術に耐えることが出来ない事があります。
もし手術を受ける場合でも術中のリスク管理治療費が高額になる等の金銭的理由で、症状の進行を抑える目薬による治療を選ぶ飼い主さんが多いようです。

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非加齢性白内障:加齢だけじゃない白内障の原因

加齢性白内障に比べて症状の進行が早く、若く発症したワンちゃんほどより早い傾向があります。

特に1歳くらいまでに発症する白内障を2つに分類すると以下のように分けることが出来ます。

先天性白内障
母犬のお腹の中にいる時から既に発症しおり、生後2ケ月くらいで白内障の所見を認めるもの
若年性白内障
生後6ケ月から1歳くらいまでに白内障が発症を認めるもの
この2つに分類しており、この2つは遺伝的理由がほとんどです。

遺伝的に白内障を発症しやすい犬種

  • プードル(ミニチュア、トイ)
  • アメリカン・コッカ―スパニエル
  • ミニチュア・シュナウザー
  • キャバリア・キングチャールズ・スパニエル
  • ジャックラッセルテリア
  • ボストン・テリア
  • フレンチ・ブルドッグ
  • 柴犬

 

他の病気が原因

  • 糖尿病
  • 低カルシウム血症
  • ブドウ膜炎、緑内障な他の眼病
  • 水晶体損傷

 

有害物質の摂取が原因

  • ジニトロフェノール
  • ナフタリンなど
人間にも有害なものなので、通常はワンちゃんも口にすることは少ないですが、
ジニトロフェノールはダイエット薬、ナフタリンは防虫剤などに含まれていることがあります。

室内飼いをしている方は、これらの物をワンちゃんが間違えて口にしないよう注意してください。

犬白内障の症状について

白内障の犬のイメージ一般的に症状が多くみられるのは6歳以上のワンちゃんで加齢が原因の場合が大半を占めます。
2歳以下のワンちゃんで発症した場合は、遺伝的要因であることがほとんどで、
進行も早い傾向にあります。

白内障の主な症状

犬の白内障は、以下のような症状があります。

  • 目の奥が白い
  • 瞳孔が開いている(眩しいところでも瞳孔が閉じない)
  • 物にぶつかる、つまずく

初期の段階では視力障害がわずかな為、ワンちゃんの様子に変化はありません。
飼い主さんが目を見てもわかりにくいことがほとんどです。
残念ながら、「白くなっているなぁ」と気付いた時には、わんちゃんの白内障の症状が進んでいること可能性があります。

白内障の発症から治療までの時間が長いと、手術をしても視力回復が難しくなります。
白内障は内科的治療でも完治が難しい病気です。
眼の濁りに気づいた時は早めに動物病院で検査をしてもらいましょう。

眼が白くても白内障じゃない!?核硬化症について

眼が白いからといって、必ずしも白内障というわけではありません。
症状が似ているけれど区別が必要な病気として「核硬化症」といものがあります。

この病気も白内障と同様に水晶体が白くなるのですが、白内障は水晶体内の液が濁るのに対し、核硬化症は水晶体の核(中心部)が硬く白くなります。
加齢とともに症状が進行しますが、視力への影響はほとんどなく、積極的な治療の必要もありません。

眼に光を当てる「徹照法(てっしょうほう)」という検査をして診断します。
眼球の奥(タペタム層)から反射する光の様子によって白内障か核硬化症かを見分けます。

治療は投薬による内科治療か手術

白内障はその進行の程度で「初期」→「未成熟」→「成熟」→「過熟」の4段階に分類されます。

初期では視力障害はさほどみられず、目薬などで症状を抑える内科治療を実施しますが、
未成熟白内障に入ると外科的治療を考えます。

内科治療~投薬で症状と進行を抑える~

症状を抑える「Nアセチルカルノシン」
眼の抗酸化力を高める効果があり白内障の症状が改善したという報告から注目を集めています。

  • ドッグクララスティル
  • Cナック
  • Dスマイル など

白内障の進行を抑える「ピレノキシン」
まだ視力がある時に、白内障の症状を抑える効果があるといわれています。

  • カリーユニ
  • カタリンK
  • ライトクリーン など
ただし、上記の薬剤への治療効果がないという見解もあり、処方するかしないかは獣医師の判断に任されているようです。

濁った水晶体を取り除きリスクを回避する外科治療

白内障が進行した場合、網膜剥離などのリスクを避ける為に手術を実施します。
一般的には、「水晶体乳化吸引術」で白く濁った水晶体を超音波で砕いて吸い取ります。
摘出した水晶体の代わりに、人工眼内レンズを装着することで視力を回復させることが出来ます。

ただし、手術を実施するには体力や他の疾患の有無など一定条件を満たす必要があり、全てのワンちゃんが手術を受けられるわけではありません。

また、手術費用も決して安くはありません。
片目でおよそ40万から50万円の手術費が必要になります。
手術の前の眼の検査はもちろん、全身の検査、手術費、入院費、投薬料なども含まれます。

手術そのものは30分ほどで終了し、麻酔がさめるまで一時間程要します。
手術後3~4日で退院となります。
退院後は、自宅での点眼をほぼ毎日し、術後の定期検査通院も大切です。

人工レンズを入れた場合は眼内で安定するまで最低1ケ月程要します。
人工レンズを用いた白内障手術の成功率は、約96%といわれ、
ほとんどワンちゃんが手術によって視力の回復が可能です。

手術だけで症状を回復させるのではなく
毎日の点眼を行うなど飼い主さんの自宅でのケアとワンちゃんとの協力がとても重要となってきます。

まとめ

白内障の主な原因が、加齢と遺伝であることから、これといった予防法はほとんどありません。
サプリメントなども流通しているようですが有効な予防治療薬として処方するかどうかは動物病院の方針によります。
しかし、早期発見することで悪化を防ぎ、適切な内科的処置で進行を遅らせることができます。
普段から健康チェックを兼ねて愛犬とふれあい早期発見できることが大切です。

 
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