犬の体調のパラメーターである便の種類には、健康体の便よりも水分を多く含んだ「下痢」というものがあります。
下痢になってしまうと、身体のどこかに不調を抱えていることが殆どです。
今回の記事で紹介する知識を元に犬の下痢についての理解を深め、愛犬の体調管理を行えるようになりましょう。
下痢ってどんな状態?
下痢は水分が多い便を表す言葉です。
本来、便の水分は一定になるように調節されているので、通常は適度なツヤがありコロンとした形で排出されます。
しかし、体に良くない食べ物を口にしたり、ストレスや病気を抱えていたりすると下痢が見られます。
不要な物質を排出する為の、身体の防衛反応として覚えておくと良いでしょう。
下痢の種類と原因
下痢には様々な種類があります。
下痢の原因によって、飼い主さんの対処が変わってくるので愛犬の状態を正しく観察出来るようにこれらの知識を身につけましょう。
寄生虫が原因の下痢
犬の体に住み着く寄生虫は「内部寄生虫」と「外部寄生虫」の2種類に分けられます。
内部寄生虫は体の内部に住み着いており、血液を吸ったりしながら栄養を得て生きています。
内部寄生虫は下痢の原因になる事が多く、寄生されている時には 便の中に寄生虫が現れることもあります。
犬回虫が原因で引き起こされる回虫症の症状として下痢が含まれているように、寄生虫症による下痢は珍しい物ではありません。
寄生虫の感染経路は様々です。
野良犬を保護した時に既に寄生されていたり、母犬から子犬へ胎盤感染することもあります。
下痢の他に嘔吐や貧血、食欲不振が見られる特徴があります。
コクシジウムという原虫によって引き起こされるコクシジウム症にも気を付けなければいけません。(特に子犬)
コクシジウム症にかかると下痢の他に血便や粘液が混じった便が見られるようになり、重症な場合は命を落としてしまう危険性もあります。
コクシジウムは回虫とは違って、二次感染を引き起こしやすいため、下痢が止まっても数週間から数ヶ月の間はトイレを共同で使わせないようにし、熱湯消毒をするときは温度を60度以上にすることが大切です。
この他にも犬が下痢を起こす寄生虫感染として、「瓜実条虫症」や「糞線虫症」、「鞭虫症」、「鉤虫症」、「ジアルジア症」、「マンソン裂頭条虫症」などがあります。
寄生虫は自己判断で特定するのは難しいので、異変を感じたら動物病院で検査を行うようにしましょう。
食中毒も下痢の原因に
犬も人間と同じように食中毒を引き起こすと、下痢が見られるようになります。
犬は雑食であるためどんなモノに対しても興味を持ちます。
散歩中にゴミを食べてしまう事も少なくありません。
そのため異物や腐ったものを口にしてしまう事も珍しくなく、飼い主さんの知らない間に食べた物が原因で食中毒になる事があります。
食中毒が引き起こされたときは、血の混じった下痢や嘔吐、発熱などが見られます。
殆どの食中毒は、症状が見られてから48時間以内に回復するとされていますが、中には下痢が続くことで低体温になったり、体調を大きく崩す事もあります。
消化不良による下痢
犬が消化しにくい食べ物を摂取した時に下痢になることがあります。
よくあるのが、人間用の牛乳を与えるケース。
犬は何となく牛乳が好きなイメージがありますが、人間が口にする牛乳は犬には分解出来ません。
犬の中には牛乳に含まれるラクトースと呼ばれる乳糖を分解する酵素を持っていない個体が存在し、そういった犬が牛乳を摂取すると下痢になってしまいます。
人間でも「牛乳を飲むとお腹を壊す」という人がいます。
原理的には犬も人間も「乳糖を分解できない」からお腹を壊すのです。
ウィルス感染症による下痢
ウィルス感染症によって下痢の症状が表れることがあります。
例えば、パルボウイルス感染症は激しい嘔吐と共に水のような下痢が見られるのが特徴です。
パルボウイルス感染症は下痢によって脱水が進行すると、ショック死をしてしまうこともあります。
犬ジステンバーウイルス感染症も下痢の症状が表れるウィルス感染症の1つです。
犬ジステンバーウイルス感染症は年を重ねて免疫力が落ちた老犬と免疫力が低い子犬かかりやすい病気なので、注意しましょう。
内臓の不調による下痢
腸や膵臓に何らかの異常がある場合にも下痢が表れることがあります。
下痢が長期間続く場合は「炎症性腸疾患(IBD)」という病気を疑ってみる必要もあるでしょう。
炎症性腸疾患は軽症であれば、食事療法で治療できることもあるので、消化のよいフードを与えることも大切になってきます。
膵炎は中年齢以上の犬で発症することが多く、中でもミニチュア・プードルやミニチュア・シュナウザー、ウェスティ・ハイランド、ホワイト・テリア、コッカー・スパニエルといった犬種が発症しやすいと言われています。
膵炎は事故によってすい臓が傷ついたときにも引き起こされるので、結構管理を徹底する必要があります。
下痢と悪性リンパ腫が関係していることもあり、消化管に関する部分に腫瘍がある場合は下痢や嘔吐が見られる可能性が高いといえるでしょう。
悪性リンパ腫は発症する部位によって症状が様々なので、日頃から定期健診などをこまめに行い、体調を管理していきましょう。
ストレスでも下痢になる
検査を行っても、下痢の原因となる病気が発見されない事があります。
もしかすると原因不明の下痢は、愛犬がストレスによるものかもしれません。
犬にとって人間は、とても大切なパートナーです。
大好きな飼い主さんに構ってもらえなかったり、寂しい思いをしたりすると強いストレスを感じ下痢になってしまうこともあります。
また、環境の変化や移動のストレスによっても下痢は引き起こされるので、愛犬を取り巻く周囲の環境にも配慮してあげましょう。
ストレスによって消化器に不調を起こすのは、人間も犬も同じですね。
愛犬の下痢に、飼い主はどう対処したら良い?
愛犬が下痢をしてしまうと、飼い主は焦ってしまうことが多いと思います。
しかし、飼い主さんにしか出来なこともあります。
こちらの項目では愛犬が下痢してしまった時に行ってほしい対処について紹介したいと思います。
【対処法1】水分を補給させよう
激しい下痢が続くと、脱水症状に陥る可能性があります。
脱水症状は命を落とす原因にもなります。
愛犬が下痢をした時には、飼い主さんは可能な限り水分を摂取させましょう。
ただし、一度に大量の水分を補給させてしまうと、下痢が酷くなってしまいます。
水分を与えるときは、時間をかけながら少量を与えるようにしましょう。
【対処法2】食事をセーブしよう
下痢を繰り返している時はフードを与えないように注意しましょう。
異物が原因となり下痢が起こっている時には、消化器官を休ませる為にに丸一日、断食させたほうがよいケースもあります。
こうした中で愛犬の下痢が止まってくるようであれば、翌日から少量ずつフードを与えていきましょう。
また、消化器官を休ませた直後なので、消化のいいフードを与えることもポイントです。
【対処法3】乳酸菌を与えよう
愛犬が普段から慢性的に下痢を引き起こしてしまう場合は、乳酸菌で腸内環境を整えてあげるのもよいでしょう。
体質が改善すれば、慢性的な下痢も徐々に治まっていく可能性があります。
乳酸菌はサプリメントだけでなく、人間用のプレーンヨーグルトからも摂取できるとされています。
ただし、下痢の原因が寄生虫や感染症などの病気である場合は効果が期待できないので、注意しましょう。
いつ病院に行けばいいの?
愛犬が下痢をした時に病院へ行く際の判断ポイントを紹介したいと思います。
【判断材料1】愛犬の食欲をチェックしよう
下痢が見られていても、いつものように自力でフードを食べられたり水を摂取できたりする場合には、様子を見るのも良いでしょう。
1~2日ほど様子を見ていて徐々に便が固まってきたり、元気がなくなったりしないようであれば、一時的な下痢である可能性が高いといえます。
様子を見ている中で食欲がなくなってきたり、フードや水を口にするのを嫌がったりするようであれば、動物病院へ連れて行くようにしましょう。
こうした場合は下痢によって脱水症状に陥っている可能性があるので、点滴で栄養を補う必要もあります。
【判断材料2】下痢が長引くとき
軽度の下痢は1~2日ほどで止まることが多いものです。
そのため、3日以上下痢が続いている場合は寄生虫が潜んでいたり、ウイルス感染症を患っていたりする可能性があるので、病院で一度診察してもらうとよいでしょう。
下痢が長引いているときは念のため、おうちの中で大人しく過ごしてもらうよう、配慮してあげましょう。
【判断材料3】他にも異常が見られる
下痢以外にも嘔吐や血便、食欲不振などが見られる場合は病気を抱えている可能性が高いといえます。
血便と聞くと、赤い血が混じっているイメージを持つ飼い主さんも多いものです。
しかし、小腸や胃から出血している場合は黒っぽい便が出るので、便の色がおかしいと思ったときは獣医さんに相談するようにしましょう。
また、体を丸めながら震えていたり、触ると怒ったりする場合は腹痛を感じているサインなので、こうした場合も早めに受診が大切になります。
動物病院へ行くときのポイント
動物病院へ行くときに必要な費用や持ち物など、知っておきたい知識について紹介しています。
動物病院へ行く前に、こちらの項目を読んでおきましょう。
何を持っていけばいいの?
下痢が見られ始めたときは、万が一のときの為にその時の状況をメモに記しておきましょう。
いつから下痢がはじまったのか、何回下痢をしたのかなどを伝えられれば、動物病院での診察もスムーズに進みます。
そ便の状態を写真で撮影し、受診時に相談してみるのもおすすめです。
出血の有無や下痢の状態は、言葉だとうまく伝わらないことも多いので、画像として残しておきましょう。
可能な場合は、便をペットシーツなどに包んで持っていくのもよいです。
ペット保険に加入している方は、保険に入っている事を証明できるものを持参すると良いでしょう。
下痢の大まかな治療費はいくら?
下痢は、原因によって治療法が異なるため、治療費に大きな差が出ます。
絶対必要となるのは便検査の費用です。
こちらは病院によっても異なりますが、1,000円程度が目安です。
下痢を引き起こしている場合は脱水症状が見られる場合も多いので、点滴を行う病院も多いものです。
点滴は犬の大きさによって金額が異なり、大型犬の場合は5,000円前後、小型犬だと3,000円前後かかるでしょう。
激しい下痢が続いている場合は体に異常がないか調べるため、血液検査を行う必要もあります。
血液検査は検査の内容によって金額が異なり、詳しいデータが欲しい場合は10,000円前後かかります。
さらに、寄生虫やウイルスになどによって下痢が引き起こされている場合は薬を処方してもらう必要があるため、より治療費がかかるでしょう。
入院が必要になった時には、かなり大きな金額が請求されることも覚悟する必要があります。
長引く下痢は自己判断しない
今回紹介したように、愛犬が下痢になってしまう原因は沢山あります。
だからこそ、下痢が長引く場合は自己判断で対処しようとせず、獣医に相談する事が大切です。
下痢の原因を突き止めるためには飼い主さんの気づきが重要になることも多いので、普段から愛犬の様子をこまめにチェックしてあげましょうね。