近年の日本で、犬を凌ぐ人気のある猫。
そんな猫の寿命はいったいどれくらいなのでしょうか。
また寿命を延ばしてあげるために出来ることはないのでしょうか。
本記事ではそんな疑問に獣医さんがお答えします。
Contents
一般的な家猫の寿命
ヒトに飼育されている猫の平均寿命は15.04才とされます。
完全室内飼育の猫の平均寿命は15.81才、外にも出る猫の平均寿命は13.26才とされます。
ちなみに、世界で最も長く生きた猫は、38才と3日の才月を生きた「Creme Puff」というアメリカの雌猫です。
人間の年齢に換算すれば150才をゆうに超える年齢ですので、いかにご長寿だったかわかりますね。
※ギネス記録に掲載されています。
参考:
参考:一般社団法人 ペットフード協会. 平成28年 全国犬猫飼育実態調査
外に出る猫の平均寿命が短い3つの理由
完全室内飼育の猫に比べ、外に出る機会のある猫の平均寿命が短い理由としては以下の3つが挙げられます。
- 感染症のリスクが高い
- 交通事故や虐待に合う可能性がある
- 健康管理を徹底し辛い
これらの理由については、下記で詳しく解説しています。
理由1 感染症のリスクが高い
外敵が少ない室内に比べ、外の世界は感染症のリスクで溢れかえっています。
野良猫との喧嘩、野生動物の襲撃、不衛生な食品摂取など想定される感染経路は多数存在します。
感染症は猫の体力を奪い、寿命を縮める原因となりますので注意が必要になります。
理由2 交通事故や虐待に合う可能性がある
車、自転車、電車、頭のネジの外れた人間。
外の世界には猫に危害を加えるものが溢れています。
特に、車や自転車などの乗り物は猫以上の速度で移動を続けている為、一瞬の判断ミスで大切な命が失われてしまいます。
中には狙って猫を轢き殺そうとする心無い方や、虐待を行う方も存在します。
もしかすると、野良猫と間違えられ保護されることもあるかもしれません。
理由3 健康管理を徹底し辛い
長生きの為に、食事制限を行っても外に出る猫は、人から餌を貰うことがあるかもしれません。
カロリーの高い人間の食べ物や、不衛生な食べ物を食べることにより体調が崩れることがあります。
また、排泄物の観察も行うことが難しくなる傾向があります。
野良猫の平均寿命は3~4歳。猫は完全室内飼育がオススメ
ノラ猫の寿命は平均して3才から4才といわれており、飼育されている猫の15才と比べると非常に短命です。
生まれてきたとしても多くの仔猫は1才になる前に感染症や天敵の襲撃、暑さや寒さ、栄養失調などが原因となり命を落とします。
おとなの猫に成長できる仔猫の割合は数頭に1頭ほどとされています。
さらに成長した後にも、縄張り争いによる怪我や感染症、交通事故、虐待などといったリスクはつきまといます。
十分な餌や水を確保するのも難しいかも知れません。ノラ猫は非常に過酷な世界で生きているのです。
様々な視点から見ても、猫を長生きさせるためには完全室内飼育をしてあげるほうがよいでしょう。
そもそも、猫は縄張りが広い生き物ではありませんので、一生を安全な室内で過ごせるほうが幸せです。
大切な猫を多くの時間を過ごしたい方は、なるべく外に出さず室内飼育を徹底しましょう。
猫の寿命を伸ばすために出来る事3つの行動
せっかく家族の一員として迎えた猫ちゃん。
出来るだけ長く一緒にいたいというのはすべての飼い主共通の願いではないでしょうか。
その願いを叶えるために出来ることはなにかご紹介します。
完全室内飼育にする
重ね重ね紹介していますが、やはり猫は完全室内飼育がオススメです。
前述の通り、外の世界には様々なリスクが存在しています。
そういったリスクから猫を守るためには、完全室内飼育を行うのがよいでしょう。
このことは完全室内飼育の猫と、そうでない猫の平均寿命に差があることからも明確です。
完全室内飼育にしてしまうとストレスになってしまうのではないか?と心配なさる方もいらっしゃるかもしれませんが、猫は十分な餌が確保されている環境では広い生活範囲を必要としない動物とされます。
環境省が発表する動物愛護および飼養管理の指針でも、猫の完全室内飼育が推奨されています。
勿論、キャットタワーなど猫がある程度の運動をできる環境を整えてあげることは必要かと思いますが、室内飼育によるストレスを過剰に心配する必要はないでしょう。
むしろストレスを心配して外に出すことは、寿命を縮めるという本末転倒の結果を招いてしまう可能性があります。
元々外に出ていた猫は徐々に完全室内外に移行する
ただし今まで長い期間、内と外を自由に出入りさせていた猫をいきなり完全室内飼育にするというのは流石にストレスをかけます。
少しずつ室内にいさせる時間を長くしていくのが良いかも知れません。
太らせない
第二に、猫の肥満を予防することが大切です。
「肥満は万病のもと」という言葉は猫にもあてはまり、肥満は猫の健康に重大な悪影響を与えます。
具体的には、糖尿病や脂肪肝(肝リピドーシス)、関節炎、尿路疾患(尿石症や膀胱炎)、歯周病、皮膚病など様々な病気の発症リスクを高めます。
糖尿病や脂肪肝は猫の生命を直接的に脅かす病気です。
またそれ以外の病気も、猫の健康寿命に大きな影響を及ぼします。
肥満はヒトが引き起こすものです。
逆にいえば、食事管理にさえ注意すれば完全に予防することができます。
ぜひ猫を適正体重に保ち、できるだけ長く健康を保てるようにしてあげてください。
定期的に健康診断を受けさせる
定期的な健康診断を受けさせることも非常に重要です。
動物は基本的に体調不良を訴えません。(喋れないから当たり前ですね)
症状に気づいたときには既に病気がかなり進行していたという例が多くあります。
動物病院で定期的に健康診断を受けさせることで、猫が症状をだす前に病気を発見できる可能性を高められます。
特に注意を払っていただきたいのが「慢性腎臓病」という病気です。
腎臓は体内の老廃物を尿として体外に排泄させる機能を持っています。
慢性腎臓病を発症すると腎臓の機能が徐々に低下していき、最終的には老廃物を体外に排泄することができなくなり死に至ります。
この病気を生涯のうちに発症する猫は3頭に1頭とされ、高齢の猫の死因の第1位です。
この病気の恐ろしい点は、完治させることができないということです。
一度失われてしまった腎臓の機能は回復させることができません。
治療は病気の進行をできるだけ遅らせることを目的として行われます。
したがって進行した状態になってから病気を発見したとしても、できることは限られているのです。
一方、明らかな症状がでる前に発見し、早期に治療を開始できればその後の寿命を年単位で延ばしてあげることが可能な病気でもあります。
慢性腎臓病以外にも、糖尿病や甲状腺機能亢進症など早期発見が重要となる病気は多くあります。
何かの症状が無くても、定期的な健康診断を受けさせてあげることを強くおすすめします。
寿命が長い猫ランキングとまとめ
混血種(いわゆる雑種)と純血種で比較した場合には、混血種のほうが長生きする傾向にあるようです。
Mixや日本猫は品種ごとの飼育頭数の中で10才以上の個体が占める割合が20%を超えています。
純血種の中で、20%を超える品種はありませんでした。
このような差が生まれる原因は明らかにされていません。
もしかしたら生存に不利な遺伝子が淘汰されているのかもしれませんね。
純血種の中で比較すると、10才以上の個体の割合はペルシャが最も多く、アビシニアン、ロシアンブルーと続きます。
つまり寿命が長い猫ランキングを作るのであれば
- ペルシャ
- アビシニアン
- ロシアンブルー
このような結果になりますね。
この順位は各品種が流行した時期にも影響をうけるとは思いますが、長生きしやすい品種を考えるひとつの参考となるのではないでしょうか。
ただし、品種による寿命の差が多少はあるにせよ飼育環境による寿命の差のほうがずっと大きいでしょう。
どのような品種を飼うまたは飼っているにしてもしっかりと飼育環境を整え、できるだけ長く一緒に過ごしていけるとよいですね。