脳内にある神経細胞が異常に電気的興奮(過剰な電気的放射発射)から生じる発作のことをてんかん発作と言います。
てんかん発作を生じる脳の慢性疾患を総称して、「てんかん」と言います。
てんかん発作が24時間以上の間隔をあけて、2回以上起きた(繰り返した)ことを基準として「てんかん」と判定されます。
てんかんの原因としては、脳の器質に原因がある場合(症候性てんかん)と脳の器質に異常がみられない場合(特発性てんかん)があります。
もし原因治療に対処できない時には、てんかん発作を抑える薬(抗てんかん薬)を定期的に服用することでてんかん発作を抑えます。
抗てんかん薬の服用はほぼ一生涯続き、費用や生活への影響などを考えると飼い主さんへの負担が大きな病気です。
てんかんのことをしっかり理解し、獣医さんとコミュニケーションをとることで、無理のない範囲で適切なケアをワンちゃんにしてあげられるようにしましょう。
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てんかん発作を起こしやすい犬種
犬種によって、てんかん発作を起こしやすい場合があります。
あなたの愛犬がてんかん発作を起こしやすい犬種であれば、今は大丈夫でも将来的に「てんかん」になる可能性を考慮して生活を送る必要があります。

アイングリッシュコッカ―スパニエル

アウェルシュスプリンガースパニエル

アウェルシュコーギー


ダックスフント

ボーダーテリア

フィニッシュスピッツ


シェパード

ハスキー

など43種類
(ケンブリッジ大学)
もし愛犬がてんかん発作を起こしやすい犬種に該当していなくても、てんかん発作が起きないとは言い切れません。
次の項目からは、てんかんの症状・対処法などについて詳しく説明します。
犬を飼っている飼い主さんの責任のひとつとして、てんかんについての知識を身につけましょう。
犬てんかんが起こる原因と症状について
てんかんは脳内の神経細胞が何らかの障害を受けたことによって引き起こされる異常な電気的興奮(過剰な電気的放射発射)が原因です。
以下の項目からは詳しい症状や原因について解説します。
犬てんかんの分類と症状
てんかんの主な症状には、「けいれん」,「失禁」,「泡をふく」,「倒れる」などが挙げられます。
脳自体の構造器質異常の有無で大きく2つに分類されています。
1.症候性てんかん(構造性てんかん):脳の構造が変質していることが原因
- 焦点性てんかん発作(局所的な神経細胞の異常興奮)
- 症状
筋肉系の異常(顔や頭部のけいれん、規則的な瞬き、規則的な肢のけいれん)
自律神経系の異常(持続的な瞳孔の散大、流延、嘔吐)
行動の異常(不安傾向、落ち着きがない、怖がる、つきまとい) - 全般性てんかん発作(脳の広範囲で神経細胞の異常興奮)
- 症状
筋肉収縮の持続(強直性発作)
筋肉収縮と弛緩の繰返し(間代性発作)
強直と間代性発作の複合(強直間代性発作)
持続した筋肉の弛緩が起こり動かなくなる(弛緩発作) - 焦点性発作から全般性発作への発展(局所的な異常興奮が広範囲に広がる)
- 症状:焦点性発作、全般性発作を複合したもの
2.特発性てんかん:脳の構造異常によらないてんかん発作
- 遺伝要因
- てんかんの原因となる特定遺伝子が原因のもの、犬種による特異性(特定の犬種でてんかん発作が起こりやすい)ものがあります。
- 1~5歳までの若いうちに初回の発作を起こす個体が多くみられます。
全身性のものや部分的なのもの、筋肉が影響を受けているもの,感覚神経が影響を受けているもの等、その症状は様々です。
その他「非遺伝要因(原因不明)」
脳への異常もなく、遺伝的な要因も見当たらない場合もあります。
特に遺伝的要因が見当たらないワンちゃんにも静かに過ごしてる時にてんかんの症状が現れることがあるので気を付ける必要があります。
てんかん発作が起きた時の対処法
てんかん発作が起きる前、その前兆がみられることもあります。
- よく吠える
- 落ち着きがない
- 食欲が旺盛になる
- よだれを垂らす
これらの4つの前兆が見られる時だけでなく、いつもと何か違うなと感じたらワンちゃんの様子に注意して観察をしましょう。
てんかん発作が起きるのは、夜間や早朝などワンちゃんが静かに過ごしている時に自宅で起こるのがほとんどです。
急に起こるものなので、慌ててしまいがちですが落ち着いて対処しましょう。
ワンちゃんが発作を起こした時の対処についての手順は以下の通りです。
- 慌てず、様子を観察しながら発作がおさまるのを待つ
- 発作の継続時間を計る
※5分以上長く続く場合はすぐに獣医師に連絡しましょう。 - 周囲の安全を確保する
- 嘔吐がみられた時は、嘔吐物が気道を塞いでいないか確認する
※ただし、発作の最中に口に手を入れると
咬まれてしまうことがあるので注意してください。 - ワンちゃんがリラックスできるように静かな環境を心掛け、名前などで呼びかけてあげる。
- てんかん発作の様子を記録する。
重篤なてんかん発作を起こした場合の対処法
てんかん発作の中でも特に症状が激しく、注意が必要なてんかん発作があります。
少しでもその可能性があるな、と感じたらすぐに動物病院へ連絡してください。
- てんかん重積発作
- てんかん発作が30分以上継続する
- 群発発作
- てんかん発作が24時間で2回以上起こる
上記のようなてんかん発作の場合は脳で重い傷害や、脳ヘルニア、中毒などの疑いもあり早急に動物病院での診察が必要です。
治療~抗てんかん薬の内服~
脳自体の器質や構造に原因がある症候性てんかん(構造性てんかん)の場合は、可能なら原因そのものへアプローチをします。
原因そのものへアプローチが難しい場合や特発性てんかんの場合は、てんかん発作を抑える抗てんかん薬を服用します。
一度開始した投薬を中断した場合には、より強いてんかん発作を引き起こす可能性もあるため、投薬を開始するとほぼ一生涯継続することがほとんどです。
投薬治療のを開始するには獣医師と良く相談しましょう。
- てんかん発作が半年以内に2回以上ある
- てんかん重積を起こした
- てんかん発作後の異常な様子(攻撃的である、視力の低下など)が24時間以上継続する
- てんかん発作の頻度が高くなり、またその持続時間も長くなった
以上のいずれかに該当する場合は投薬治療を開始します。
【抗てんかん薬】
フェノバルビタール:血中濃度測定が可能で安価であることから昔から処方されており現在でもよく使用されています。
(その他臭化カリウウムなど)
当たり前ですが、てんかんの薬剤には副作用もあります。
投与後すぐにあらわれる初期副作用と長期投与することであらわれる長期副作用があります。
軽度なものから肝障害など様々な副作用のケースがあります。
その診断も合わせて投薬治療と定期通院が大切になってきます。
まとめ~飼い主さんにできること~
てんかんという病気にとって毎日の投薬や定期検査、ワンちゃん自身へのケアに至るまで、飼い主さんのケアほど大切なものはありません。
また、てんかん発作のほとんどは自宅で起こることが多く、その際の情報はてんかんの診断や、より適切な治療法を選択する獣医師にとって、大切な情報になります。
【飼い主さんにお願いしたいこと】
- 投薬の目的と継続する理由、副作用などへの理解
- 投薬スケジュールに沿って投薬する
- 定期的に動物病院へ通う
- 環境作り
- てんかんの様子を観察し、記録する
環境は、てんかん発作が起きた時、ワンちゃんが物にぶつかったりしてケガをしないように注意する事。
様子の観察・記録は、日誌などを作成したりして、日付やてんかん発作の前後、発作最中の様子、継続時間などを記録します。
最近ではスマートフォンなどで動画を撮影しておき獣医師に見せる飼い主さんも増えてきました。
もちろん、苦しんでいるワンちゃんへのケアと周囲の安全確認を何より大切にしてあげてください。
「てんかん」という病気は飼い主さんの日常生活への負担が少なくない病気です。
日常的な投薬に加え、急に起こるてんかん発作への対応や危機感もあります。
病気のこと、自宅でのケアの方法、費用のことなども含めて獣医師とのコミュニケーションをとりながら、「てんかん」そのものへの知識や理解を深め、無理のない範囲でケアをしてあげて下さい。