犬のフィラリア症は、フィラリアという寄生虫が蚊に刺されることで感染することで起こります。
治療が遅れると咳が出る、呼吸が苦しくなるなどの心臓病の症状が出るようになります。
フィラリアとは

フィラリアは線虫類に属する寄生虫です。
フィラリアはどのように感染していくのでしょうか?
まず、この病気を媒介する蚊は日本に約16種類います。
フィラリアに感染している犬の血を蚊が吸血するときにフィラリア子虫(大きさ約0.3㎜)が蚊の体内に入ります。
この蚊がほかの犬の血を吸血するときに、ほかの犬の体内に侵入していきます。

体内に侵入したフィラリア子虫は侵入直後は犬の皮膚の下(筋肉や脂肪の周り)で生活し、侵入から約2か月間の間に脱皮を2回行い成長します。
その後血管に侵入し、心臓や肺へと移動します。
侵入してから心臓や肺に到達するまでに約半年かかります。
心臓に到達する頃にはオスは約17㎝、メスは約28㎝の白くて細長い成虫になります。
寄生するフィラリアがオス・メスともにいる場合には、ミクロフィラリアという子供が多数生まれ血液中に流れ出します。
このミクロフィラリアを蚊が吸血する際に体内に取り込み、他の犬を吸血することで感染が多くの犬の間で広がっていきます。
犬フィラリアの症状とは
犬のフィラリア症の症状は呼吸器系の症状と全身症状があります。
典型的なものをリストにすると次のようになります。
- 元気・食欲がなくなる
- 咳がでる
- 呼吸が荒くなる
- 四肢がむくむ
- 腹水がたまる
- 血混じりの鼻汁が出る
- 血を吐く
寄生しているフィラリアの数や寄生期間により様々です。
上に挙げた症状がすべて出るとは限りません。
寄生数が少なかったり、感染の初期には全く症状を示しません。
寄生してから時間が経過するにつれ症状はどんどん重くなり最悪の場合命を落とすこともあります。
また、フィラリア症の救急疾患として、「大動脈症候群(ベナキャバシンドローム)」と呼ばれるものがあります。
通常フィラリア成虫は肺動脈または心臓の右心室に寄生しています。
このフィラリアが移動して右心房と右心室をまたぐように寄生してしまう場合がります。
右心房と右心室の間には三尖弁という弁があり血液が逆流しないようにしています。
この弁にフィラリアが絡みついてしまい弁が閉鎖しなくなると体調の急激な悪化が起こります。
急激な呼吸困難、虚脱、赤ワイン色の尿が主な症状です。
一刻を争う事態ですので、早急に動物病院を受診しましょう。
フィラリアの他にもマダニなどの寄生虫がいる為お散歩時の注意が必要です。
マダニについてはこちらの記事を参考にしてみてください。
フィラリア予防薬の仕組み
フィラリアは予防しないで一夏経過すると14%、二夏経過すると90%が感染するといわれています。
フィラリア予防薬はどのような仕組みで効くのでしょうか?
フィラリア予防薬は蚊に刺されても大丈夫なように、体の表面が保護されたりするものではありません。
フィラリア予防薬は体内に侵入したフィラリア子虫をまとめて駆虫する薬です。
フィラリア子虫を持つ蚊に刺されると必ず体内にフィラリア子虫が侵入します。
これは、フィラリア予防薬を内服している犬でも内服していない犬でも同様です。
前述のとおり、体内に侵入して約2か月間は皮膚の下で生活したのち血管に侵入します。
フィラリア子虫が血管に入るまでならば、駆虫薬で駆除できますが、血管内に侵入すると駆虫薬で駆除できなくなります。
確実に皮膚の下にいるタイミングで駆除していくのがフィラリア予防薬の仕組みです。
蚊は気温が13度以上の日が1週間近く続くと吸血し始めます。
蚊が飛び始めてから1か月以内に投与し蚊がいなくなってから1か月後に、シーズン最後の投薬をするのがフィラリア予防薬の理想的な投与の仕方です。
フィラリアの予防薬と治療方法
予防薬には「内服薬」「塗布薬」「注射薬」があります。
薬の形状 | 商品名 | 薬剤名 | 適応症 |
---|---|---|---|
チュアブル | イベルメックDSP | イベルメクチン パモ酸ピランテル |
フィラリア・回虫・鈎虫 |
カルドメック | |||
パナメクチンチュアブルP | |||
モキシハートタブKS | モキシデクチン | フィラリア | |
インターセプターSチュアブル | ミルベマイシンオキシム プラジクアンテル |
フィラリア・回虫・鈎虫 鞭虫・瓜実条虫・多包条虫 |
|
ネクスガードスペクトラ | ミルベマイシンオキシム アフォキソラネル |
フィラリア・ノミ・回虫 鈎虫・鞭虫 |
|
錠剤 | モキシデック錠 | イベルメクチン | フィラリア |
アザバスカ錠 | |||
ハートメクチン錠 | |||
パナメクチン錠 | |||
ミルベマイシンA錠 | ミルベマイシンオキシム | フィラリア・回虫・鈎虫 鞭虫 |
|
ミルベマイシン錠「フジタ」 | |||
スポット | レボリューション12%犬用、6%犬猫用 | セラメクチン | フィラリア・ノミ・耳ヒゼンダニ |
アドバンテージハート | イベルメクチン イミダクロプリド |
フィラリア・ノミ | |
システック | ミルベマイシンオキシム ルフェヌロン |
フィラリア・ノミ・回虫 鈎虫・鞭虫 |
|
顆粒 | ミルベマイシンA顆粒 | ミルベマイシンオキシム | フィラリア・回虫・鈎虫 鞭虫 |
注射 | モキシデックSR | モキシデクチン | フィラリア |
プロハート12 |
様々な形状がありますので確実に投与できるものを選んでください。
薬には副作用がありますのでお薬の選択は、かかりつけの獣医師によく相談して決めるようにしましょう。
また、フィラリアにすでにかかっている場合には、イベルメクチン・ミルベマイシンオキシムが入っているお薬は投与しないほうが良いといわれています。
コリー、シェルティ、ボーダーコリー、コリー系の雑種、シェパードはイベルメクチン・ミルベマイシンオキシムの入っているお薬は投与しないほうが良いといわれていますので、フィラリア予防薬の選択には十分気を付けてください。
犬フィラリアの治療方法について
大動脈症候群
頚静脈から心臓まで鉗子を入れ心臓内のフィラリアを除去します。
大動脈症候群は救急の病気なのでリスクが高く死亡率が高くなります。
緊急で手術を行っても助からない場合があります。
フィラリア症
成虫の駆除薬を注射する方法があります。
一気に成虫が死んでしまうので血管に詰まってしまうことがあるので、注射後は1か月ほど安静にし散歩も控える必要があります。危険を伴う方法です。
フィラリア予防薬を通年投与し、心臓内に寄生するフィラリアの寿命を待つ方法があります。
フィラリアの寿命は2~3年と言われており、この間フィラリアの寄生を防ぎ、寄生しているフィラリア成虫が弱るのを待ちます。
時間はかかりますが、犬に対しての影響が小さく安全な方法です。
咳などが出る場合は対症療法を行います。
どのような治療方法を選ぶかは、症状や年齢などによって変わります。
手術に耐えられない状態で無理に手術を行うと死亡してしまうケースもあります。
状況に応じて治療方法を選択する必要があります。
フィラリアの薬を予防シーズン(地域によって異なりますが5~12月一般的です)が始まり初めて投与する前には、フィラリアにかかっていないか血液検査で確認してから予防薬を投与するようにしましょう。
血管内にミクロフィラリアがいた場合、予防薬の影響で、これらが一気に死滅することがあります。
死んでしまったミクロフィラリアが細い血管内に詰まってしまったり、異物が血管内で産生されてしまうと激しいアレルギー反応が起こることがあります。
万が一、このような状態が起こってしまうと危険です。
毎年投薬を始める前には獣医師の診察を受けてください。
まとめ~犬フィラリアは予防が大切~
フィラリア症は予防しなければかかる確率が高い病気です。
室内犬であっても室内に蚊が侵入することはありますので、しっかり予防しましょう。
早く投与をやめてしまって冬の間に心臓内に寄生してしまったケースが非常に多いのでシーズン最後のお薬はできるだけ12月まで飲ませてあげましょう。
フィラリア以外にも寿命を縮める要素は沢山あるので、少しでも愛犬と一緒に居たいと考えている人はこちらの記事を参考に寿命を伸ばしてみませんか?